秋、そして冬時間 ( L’ AUTOMNE et L’ HEURE D’ HIVER )

“秋晴れ”とまではいかないまでも高い空にウロコ雲、黄色味を帯びた陽光に木々の葉が日々色を変えていく様に、秋の深まりを感じます。向かい側の2本のポプラ(le peuplier)の根元に散り落ちた沢山の小さな黄葉が、まだ緑を残す芝生に作る模様は、まるで貼り絵(le collage)のようです。紅葉は家の壁や土塀に這う蔦ぐらいなもの、木々の葉は殆どが黄色くなって散ります。街の並木に最近植え替えられた銀杏(le ginkgo)の黄色は、格別な美しさで目立ち、何とも云えない懐かしさを覚えます。朝市を覗きますと、それは色々なキノコ、栗や木の実、ブドウ、梨など秋の味覚が賑やかに並んでいます。コルシカ島やモロッコ産の可愛らしいミカンも山と積まれています。この季節にしか食べられないチーズの“モン・ドール”(Vacherin Mont-d’Or)はとてもソフトなのでナイフで切り分けることが出来ず匙ですくっていただきます。間もなく解禁のボージョレ・ヌーヴォー(le Beaujolais nouveau)で豊かな秋が頂点に達するようです。11月1日は“諸聖人の祝日”(Toussaint),日本の“お盆”のような祭事で、学校も2週間程お休み、家族で里帰りしてお墓参りをする慣わしですが、お墓に供える秋の花は菊(le chrysantheme)ぐらいしかないものですから、どの花屋さんも店先いっぱいに黄、白、紅、紫の菊の花の鉢植えを並べています。そして今日から“冬時間”(l’ heure d’ hiver)、時計の針を1時間遅らせますから、朝の8時は未だ7時、日本との時差は8時間となって、パリの午前10時は日本では同日午後の6時です。