メルルと桜ん坊 ( LE MERLE ET LES CERISES )

夏が近付いてきたのでしょうか、このところ暑く晴れることもあれば、突然に強い風が吹いて、雷を伴った雨が降るような大嵐になったり、変り易いお天気です。先日、ロワール河流域地方にテニス・ボール程もある大きな雹が降って、丁度花が咲きかかったブドウ畑に被害を及ぼしましたが、住人達はその雹を冷凍庫に入れて保存するなど、のんびりしたものでした。こんなお天気の毎日に、晴れた日には胸を張り、日の出前から日が沈むまで屋根の高い所やTVのアンテナにとまって鋭く大きな声でメロディーを唄う鳥、それがメルルという鳩よりもやや小さい黒い鳥なのです。辞書によれば“クロツグミ”或いは“クロウタドリ”と訳されています。それが、何となく蒸し暑く重く感じられ、黒雲がやってきますと、木の枝の下の方や、茂みの中を低く歩き回って知らん顔、ピイとも鳴きません。スズメや鳩よりも身近な親しみを感じる鳥なのでしょう“メルル荘”、“メルル庵”などと名前を付けている家も見かけます。朝市を覗きますと、南仏産の苺“ガリゲット(la gariguette)”が香り高く、プロヴァンス産の桜ん坊“ビガロー(la bigarreau) ”が真っ赤にツヤツヤと沢山に並んでいます。仏像が手にする蓮の花に似た深緑のアーティチョーク“アルティショー(l’artichaut)朝鮮アザミ”もこの季節のもの、ヴィネグレットでいただく野菜ですが、茹でるのに大きなお鍋が必要ですし、茹で上がるのに少々時間がかかります。